Achievements(呼吸器内科からのお知らせ)
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当科 寺井秀樹先生、浜本純子研究員の論文がMolecular Cancer Researchに採用されました

題名

SHOC2 is a Critical Modulator of Sensitivity to EGFR-TKIs in Non-Small Cell Lung Cancer Cells

邦題

SHOC2は非小細胞肺癌でのEGFR-TKI感受性を制御する

著者

慶應義塾大学医学部 臨床研究推進センター 寺井 秀樹

慶應義塾大学医学部 呼吸器内科 浜本純子(Co-first author)

掲載ジャーナル

Molecular Cancer Research

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33106373/

論文要旨

背景

上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子変異を有する非小細胞肺癌に対してEGFRチロシンキナーゼ阻害剤(EGFR-TKI)が有効であるが、1-2年以内に薬剤耐性を獲得することが知られている。この獲得耐性には治療初期の段階で一部の癌細胞が死滅せずに残存する初期耐性の問題が関与していると考えられている。

方法

EGFRエクソン19欠損を有し、EGFR-TKIに対して高い感受性を示すPC9非小細胞肺癌細胞株を用いて、EGFR-TKIの初期耐性に関わる遺伝子をCRISPR/Cas9スクリーニングを用いて解析した。

結果

初期耐性に関わる遺伝子を複数同定したが、その中でEGFR-TKI感受性との関係について既存の報告がなかった足場タンパクをコードするSHOC2遺伝子に注目した。PC9細胞株を用いた実験で、SHOC2遺伝子を欠損すると、EGFR-TKIへの感受性が増強し、逆にSHOC2遺伝子を過剰発現すると、EGFR-TKIへの感受性が減弱することが確認された。また、EGFR-TKIでの治療前後の肺癌組織において治療前と比較して、治療後でSHOC2の発現が上昇していることが判明した。

結論

SHOC2遺伝子が非小細胞肺癌細胞のEGFR-TKI感受性に影響を与えることが示唆された。

図 SHOC2抑制はEGFR-TKIの初期効果を増強する

本論文の与えるインパクトや将来の見通し

SHOC2がEGFR-TKIの感受性に及ぼすメカニズムを理解することで、EGFR-TKI感受性を高める治療方法の開発、薬剤耐性の解除に繋がる可能性が示唆された。また、今回我々はCRISPR/Cas9スクリーニングを用いてSHOC2以外にも薬剤の感受性、耐性に関わる遺伝子を同定した。今後、本研究が進むことで耐性化が起こりにくく根治性の高い分子標的治療薬・治療法の開発、さらには肺癌患者の予後改善につながると期待される。