題名
Lysophosphatidylcholine Acyltransferase 1 Deficiency Promotes Pulmonary Emphysema via Apoptosis of Alveolar Epithelial Cells
著者
慶應義塾大学医学部 呼吸器内科 田野﨑貴絵
掲載ジャーナル
Inflammation. 2022 Aug; 45(4):1765-1779.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35338433/
論文要旨
背景:Lysophosphatidylcholine acyltransferase 1(LPCAT1)は肺の2型肺胞上皮細胞(AEC2)に多く発現しているリン脂質合成酵素である。LPCAT1はサーファクタント中のリン脂質合成に関わる酵素であり、肺疾患との関連が示唆されているが、肺気腫との関連は明らかになっていない。
目的:LPCAT1と肺気腫の関連を検討した。
方法・結果:LPCAT1ノックアウト(KO)マウスでは肺サーファクタントに含まれるリン脂質(Dipalmitoylphosphatidylcholine )の低下が認められた。次に、LPCAT1 KOマウスにエラスターゼを気管内投与すると、WTマウスと比較してAEC2のアポトーシスの増加と肺気腫の増悪が認められた。次に、タバコ煙抽出液(CSE)刺激時のヒトAEC2 RNA-seqデータとA549細胞の公開データを統合解析すると、LPCAT1の発現低下やアポトーシス経路の関連が示唆された。最後に、A549細胞のLPCAT1発現をsiRNAにより低下させると、細胞増殖が抑制され、CSE刺激でアポトーシスが誘導された。
結論:LPCAT1の低下は2型肺胞上皮細胞のアポトーシスを誘導し肺気腫を増悪させる。
本論文の与えるインパクトや将来の見通し
LPCAT1の異常は肺気腫の増悪要因としては小さいものであると考えられるが、リン脂質合成酵素の異常と肺気腫との関連を初めて示した。今後リン脂質の異常によるアポトーシス促進の機序の解明が必要である。