題名
Real-world clinical practice for advanced non-small-cell lung cancer in the very elderly: A retrospective multicenter analysis
著者
筆頭著者 慶應義塾大学医学部 呼吸器内科 福島貴大
責任著者 東京医療センター 呼吸器内科 小山田吉孝
掲載ジャーナル
Clinical Lung Cancer
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35680551/
doi: 10.1016/j.cllc.2022.05.003.
PMID 35680551
論文要旨
背景/目的:80歳以上の高齢進行非小細胞肺癌患者は臨床試験において除外されている場合が多く、当該患者に対する適切な治療選択、予後予測のエビデンスの蓄積が不十分である。そこで我々は80歳以上の高齢進行非小細胞肺癌患者のReal world dataを用いて臨床特徴, 予後因子の検討を行った。
方法:2016-2017年に当院および関連9病院(通称Keio Lung Oncology Group(KLOG))で通院治療された132人を対象とした。PS (Performance Status), Biomarker status (EGFR, ALKなどの遺伝子変異有無, PD-L1高発現有無)などで層別化を行い、OS(全生存期間)の比較を実施した。また、予後延長に寄与する因子を多変量解析で検討した。
結果:PS0-2と良好な患者において、Biomarker-positiveの患者ではnegativeの患者と比較しOS延長がみられた(HR 0.40; p<0.0001)。EGFR, ALKなどの遺伝子変異がなく、PD-L1高発現もないBiomarker negativeの患者では、 全身化学療法の有無でOSに有意差は生じなかった。TKIやICIの治療歴は有意な予後延長因子となったが、Cytotoxic drugのみの使用は有意な因子とはならなかった。
結語:80歳以上の高齢進行非小細胞肺癌患者でもBiomarker-statusに応じたTKIやICIの治療は予後延長に寄与すると考えられる。Cytotoxic drugのみの使用は本研究においては予後延長効果が得られず、今後のさらなる研究が検討される。
本論文の与えるインパクトや将来の見通し
80歳以上に限定した進行非小細胞肺癌の予後解析の検討は未だ報告が乏しく、本研究結果はこのような患者集団の診療を行ううえで有益なものと考えられる。Cytotoxic drugのみしか使用できない場合、期待する予後延長効果が得られない可能性があり、副作用の観点や他の患者背景因子も交えた大規模な追加研究が望まれる。