Achievements(呼吸器内科からのお知らせ)
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当科 正木克宜先生の論文がnpj Digital Medicineに採用されました

題名

A randomized controlled trial of a smoking cessation smartphone application with a carbon monoxide checker.

邦題

モバイル呼気中一酸化炭素測定器連動禁煙支援スマホアプリの有効性検証(ランダム化比較対照試験)

著者

慶應義塾大学医学部 呼吸器内科 正木克宜

掲載ジャーナル

npj Digital Medicine

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32195370/

論文要旨

背景

禁煙治療の長期継続成功率向上を目的に禁煙治療スマホアプリを開発した。アプリは「禁煙治療のための標準手順書」の治療内容に基づいており、その機能には①喫煙欲求や禁煙治療薬の副作用が出現した際の対応を、個別化された内容で助言する自動応答チャット機能、②禁煙治療のための教育動画コンテンツ配信、③自宅で測定する呼気一酸化炭素濃度と連動したデジタル禁煙日記、④医師向けの治療ガイダンスが含まれる(図1)。

方法

31施設の禁煙外来を受診した喫煙者584人を対象に、禁煙補助薬の処方を含む標準的治療内容に加えてニコチン依存症治療用アプリを併用した介入群と、治療用プログラムが入っていない対照アプリを使用した対照群に割り付け、9-24週の完全禁煙継続率(主要評価項目)、9-52週の完全禁煙継続率など(副次評価項目)を検証した。

結果

9‐24 週の完全禁煙継続率は介入群で63.9%、対照群で50.5%であり介入群で有意に高かった(オッズ比 1.73;95%信頼区間 1.24‐2.42, P = 0.001)。9‐52 週の完全禁煙継続率でもその治療効果は有意 に保たれていた(介入群 52.3%, 対照群 41.5%、オッズ比 1.55;95%信頼区間 1.11‐2.16, P = 0.010)。

結論

禁煙治療スマホアプリは禁煙外来中およびその後1年間の禁煙継続に有効であった。

図1.禁煙治療スマホアプリの仕組み。禁煙外来受診者(赤)に対してモバイル呼気一酸化炭素測定器連動スマホアプリを提供する。アプリは日記、教育動画、チャットボットなどの機能を有する。外来主治医(青)は禁煙進捗やアプリの使用状況をクラウド上で参照することができる。

図2.完全禁煙継続率(左)と時点禁煙率(右)。いずれの時点でも介入群(実線)が対照群(点線)を上回った。

本論文の与えるインパクトや将来の見通し

現在、様々な疾患に対する治療・予防を目的としたデジタルツールが開発・検証されている。本アプリは半年以上の長期的な禁煙継続効果が薬物療法に上乗せして科学的に立証された世界初のデジタル医療製品である。本研究結果をふまえて禁煙治療アプリの薬事承認がなされ、近日に保険診療のもとで本アプリを「処方」できるようになる見通しである。デジタル治療の先鞭をつける製品と研究成果を本邦の呼吸器内科分野から生み出せたことにも意義があると考える。