題名
The challenge of differentiating tuberculous meningitis from bacterial meningitis
細菌性髄膜炎と鑑別に難渋した結核性髄膜炎
著者
Momoko Kurihara 1 2, Tomonori Kuroki 1, Yushi Nomura 1, Otohiro Katsube 1, Takafumi Umetsu 1, Toshio Numao 1, Taro Shimizu 3, Kumiya Sugiyama
掲載ジャーナル
Respirology Case Reports
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35371494/
論文要旨
結核性髄膜炎(TBM)は意識障害の原因精査において、稀ではあるが重要な鑑別診断である.遷延する発熱と意識障害を主訴に精査加療となった83歳女性のTBMの1例を報告した。精査の過程で髄液細胞数増加を認め、細菌性髄膜炎の治療が開始されたが、症状は改善しなかった。その後、病院を複数受診し、経過中に胸部CTで両肺野のびまん性粒状影を認め,喀痰抗酸菌検査で塗抹・培養陽性となり,髄液の値 Adenosine Deaminase 高値が判明した。粟粒結核に続発するTBMと診断し,ステロイドと抗結核薬による治療を開始した.しかし,意識レベルの改善はみられず,178日目に逝去された.TBMの治療の遅れは予後に影響するため,意識障害の鑑別診断として念頭に置く必要がある.
本論文の与えるインパクトや将来の見通し
本報告ではTBM の早期診断に重要な点について論じた。まず、粟粒結核の10-35%がTBM を合併するため、粟粒陰影の検索が必要ということである。原因不明の意識障害・発熱がある際は、CTを用いた全身画像検索が有用である。また、日本は結核の中蔓延国であったため、髄膜炎が疑われる際は、起因菌として結核菌を考慮すべきである。そのため、腰椎穿刺を行う際、髄液抗酸菌培養も提出が必須である。初診時に亜急性の経過で意識障害・発熱を認める患者は抗酸菌感染症も鑑別にあげて精査を進めることで、より早期に治療介入し、予後不良を避けられる可能性がある。結核感染症を鑑別診断として常に念頭におくことが重要であると実感した1例である。